2009年11月4日水曜日

家出「鳥肌が立つくらい気持ち良かった」

【巨人7―4日本ハム】阿部に欲はなかった。でも、結果に驚くこともなかった。初対戦の糸数に対し、左中間席に運ぶイメージを持っていたからだ。2回1死。李スンヨプの特大弾直後の打席だった。追い込まれながら甘く入った直球を、左中間席へと叩き込んだ。

「“自分も”とは思わなかったから逆方向に打球が行ってくれた」

試合前のフリー打撃。右の打撃投手に対し、最後の打球は左中間席への一発だった。

昨年は右肩を痛め、日本シリーズはDHでの出場だった。今シリーズは捕手として臨んでいるだけに、気苦労も多い。札幌では2試合で日本ハム打線に24安打を許した。「いいバッターが本当に多い。どっからでも点が入りそう」と印象を口にする。この日の練習中に口の中を見た。でき物があった。「口にヘルペスできちゃったよ。疲れてんのかなあ」。打撃に集中することは至難の状況だった。

それでも打席では切り替えた。1点差に迫られた直後の8回2死満塁。貴重な2点打を右前に運んだ。本拠地初戦。お立ち台で「鳥肌が立つくらい気持ち良かった。最高のボルテージ。ファンの皆さんが後押ししてくれました」と感謝した。原監督は「ここって時にキャプテンがやってくれました」と称えた。

お立ち台を終えた阿部は、ベンチ裏でスパイクのひもを緩めた。捕手としての出場は楽しいか。こんな問いに、笑ってこう答えた。「楽しかねえよ。勝ったら楽しいけど」。日本シリーズで2年連続の一発はチームのシリーズ通算200号の記念弾。9月18日のヤクルト戦(神宮)では、球団の捕手としては初となる、自身200号を放っている。チームを乗せるイメージ通りの一発。阿部が放った、1年で2度目のメモリアルアーチだった。